薬物過敏症①副作用とは。副作用と診断されるまで。

薬物アレルギーと薬物過敏症(薬物不耐症)では、出てくる症状がほぼ同じなので、アレルギー科専門医以外では、薬剤の副作用が疑われる症状が出ると、「薬物アレルギー」とひとくくりにしていることが多いと思います。実際、現在通院中の大学病院(婦人科・麻酔科)では、「薬物アレルギー」でひとくくりにされていました。基本的に、出てきたその症状が、アレルギー反応だったにせよ、過敏症(不耐症)反応だったにせよ、症状が出ているその時に採血なり検査をしないと、症状が落ち着いてからでは、まったく採血などに異常が出てきません。なので、現実問題として、その症状がアレルギー症状だったのか、過敏症(不耐症)の症状だったのか、厳密に判断するのは難しいのです。なので、「アレルギー症状だったかも」とひとくくりにされることが多いのです。


有害事象と副作用の違い

一般的に、薬を飲んだあとに、何らかの「症状」が出ると『副作用がでた』と言われることが多いですが、厳密には、その「症状」は有害事象と副作用に分けられます。

有害事象

「医薬品が投与された患者または被験者に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごと」とされています。この有害事象とは、薬を服用・使用したら、不快な症状(好ましくない症状)は出たが、「該当医薬品の投与との因果関係は問わない」とされています。なので、あくまでも、

1.薬を服用した後に出てきた、という時間的な前後関係はある

2.医療上、好ましくない事象(不快な症状)である

という点が判断基準であり、「因果関係は問わない」、つまり、本当に服用した(使用した)薬によって引き起こされたものなのかは分からない、因果関係は不明、というのが、有害事象です。

副作用

「医薬品に対する有害で意図しない反応」と定義されています。

『医薬品に対する反応』ということで、『当該医薬品と事象との間には因果関係がある(可能性が高い)』と認められる情報(エビデンス)がある、ということです。


つまり、普段よく会話で出てくる「〇〇(薬)飲んだら、××(症状)が出てさ~、」というレベルの場合は、「副作用」ではなく、「有害事象」となります。

薬物アレルギー・薬物過敏症(不耐症)による症状は副作用

症状が出て間もない時に病院を受診できれば、たいがい、問診の後に採血をします。出てきた症状にもよりますが、もし、出てきた症状が結構強く、薬剤による副作用が強く疑われる場合(過去にも同じような症状が出たことがあるなど)や、原因を突き止めておいた方が良い、と担当医が判断したら、原因を探る検査をすることになります。もし、受診したクリニック・病院にアレルギーの専門医師がいなかったり、検査できる体制が整ってない場合は、専門機関に紹介されるかと思います。

受診したとき、もう症状が落ち着いていて、採血の結果でも異常が見られなかった場合でも、問診時に聞いた症状が大きかったり強かったり、薬剤による副作用が強く疑われた(過去にも似たような症状を出したことがある)場合には、同様に、原因を突き止める検査を行うか、試験が行える専門機関へ紹介されます。

副作用が疑われるとき

1.今までなかった症状が、時には複数の症状が重なって急激に出てきたとき

  * 皮膚が赤くはれあがっていたり、湿疹が出てきた

  * 皮膚が盛り上がったりして、強いかゆみを伴っている

  * 息苦しさが出ていたり、ヒューヒューとのどがなっている

  * 強いむくみが出てきた

  * 目が急に充血してきた

  * 強い消化器症状(下痢や嘔吐)を繰り返したり、強い痛みを伴う

  * 強烈な寒気が急に出てきたり、38℃以上にまで一気に熱が上昇した

  * 血圧が急に下がったり、頭痛やめまいがでてきた  などなど。

2.採血の結果、白血球に異常値が出たとき

白血球に異常値が出ているときは、どこかで炎症反応が起こっている(白血球が何かと戦っている)証拠ですが、白血球にもいろいろと種類(分画)があり、それぞれに役割があります。白血球の分画のうち、特に好酸球や好塩基球の値が上昇したら、アレルギー反応であることが疑われます。

3.白血球に異常は出ていないが、今まで正常値だった項目が急に異常値になったとき

薬による副作用は、治療目的以外の臓器に影響がおよび、機能を障害することがあります。そのため、今まで異常値が出ていなかった項目に、急に異常を示す値が出てきたときは、薬による副作用が疑われます。


しかし、これだけでは、副作用だとは診断されません。この時点では、あくまでも、「副作用の疑い」です。


副作用と診断するためのテスト

日本アレルギー学会の一般向けのサイトに、詳しいことが書いてあるので、詳細はそちらを参考にしてください。

1.特異的IgE抗体テスト

血液検査でわかります。アレルギーに大きく関与しているといわれている免疫グロブリンE(IgE)抗体が体内で作られているかどうか、を調べる検査です。通常は検体(採取した血液)を専門の検査機関に送るので、結果が出るまでに数日かかります。結果は、IgE抗体のレベルとともに、陽性もしくは陰性と出ます。ただし、薬物アレルギーを特定する場合には、あまり使わないと思います。食物アレルギーや、ダニ・ホコリ、花粉に対するアレルギーなどの可能性も否定できない場合には、行うのかもしれませんが。

2.皮膚テスト(パッチテスト、プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト)

多分、薬物アレルギー・過敏症であるかどうか、原因薬物はどれなのかを判断する場合には、こっちの皮膚テストを行う方が多いと思います。

*パッチテスト(主に遅延型に行われる)

ごくごく少量の薬(主に塗り薬や液状の薬)を、皮膚のやわらかいところ(腕の内側など)に、軽く塗り付け、しばらく放置します。手術前に、消毒薬に対するアレルギー反応を見るのに行われますし、ヘアーカラー溶液を使う場合にも、パッチテストを行うようにパッケージの裏に書いてあります。塗り付けた部分が赤く腫れてきたり、湿疹・水泡が出てきた場合は、アレルギー反応と判断されます。

*プリックテスト

腕の内側に、疑いのある薬剤をごく少量をたらし、その上から細い針で、上からプチっと刺して、少量の薬剤を体内に入れます。15~30分後に赤く腫れあがったりしていないかを確認します。もし赤く盛り上がった部分が5mm以上になった場合は陽性判定(アレルギー反応)となります。

*スクラッチテスト

もし、プリックテストで反応が出なかった場合は、このスクラッチテストをして再度テストを行うそうです。スクラッチテストは、その名の通り、軽く細い針で出血しない程度にひっかいて、少量の薬剤を体内に入れます。プリックテストよりかは多めの薬剤が入る形になります。判定はプリックテストと同じく、赤く腫れあがり5mm以上大きくなった場合は陽性判定(アレルギー反応)となります。

*皮内テスト

注射針で、ごく少量の薬剤を皮膚の中(皮下)に流し込んで反応をみる検査です。プリックテストやスクラッチテストと原理は同じですが、体内に入る薬剤の量は多くなるので、アナフィラキシー(重篤なアレルギー)を引き起こす可能性もあるので、外来ではあまりしないのではないかと思います。

3.経口負荷試験(内服薬しかない場合)

予想される症状にもよるが、基本的には、少量から服用を始めて、少しずつ増やしていき、実際に服用することで症状が引き起こされるかどうか、再現性を調べるときに行われることが多いと思います。または、複数の薬剤を服用中に、副作用が疑われる症状が出た場合に、被疑薬を特定するために行われる場合も多いと思います。

これらのテスト(場合によっては複数)行うことによって、ようやく、「副作用だった」か否が確認されます。


負荷試験は、基本的に「症状を引き出す」試験

そのため、日本アレルギー学会によって認定された、アレルギー専門医が複数常勤で働いている施設でのみ、負荷試験が行われています。

また、予想される症状が軽い場合や、総合病院・大病院で、負荷試験後にアナフィラキシーなどの重篤な副作用が引き起こされても、すぐに他科との連携が取れ、入院できる設備が整っている施設でない限りは、外来では、採血でできる特異的IgE抗体テスト以外の、負荷試験は行われないと思います。


次回に予定している内容:

薬物過敏症②アレルギー性と非アレルギー性副作用の違いとは

薬物過敏症③負荷試験の実際(体験談)

薬物過敏症④化学物質過敏症との相違点(経験談から)


今回の参考文献:

医学のあゆみ くすりの副作用のすべて vol. 251 No. 9  2014.11.29 医歯薬出版株式会社

日本アレルギー学会 ホームページ


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Well being lab

昔から病弱で、極端な薬物過敏症のために、薬での治療が難しく、逆に副作用でいろいろと経験値を重ねている私ですが、せっかくだから、この長期にわたる豊富な患者経験値と、分子生物学の知識を融合させて、病気を持っていろいろと困っている人向けの情報を発信し、シェアしようと立ち上げました。